142人が本棚に入れています
本棚に追加
次の瞬間、なんともラッキーな事に
小さな文字で『タイムレコーダー』と書かれた、細い溝付きの時計を見つけたので
もしかして、この中にカードを入れたらいいのかなぁ…と微妙に思った賢い玲は、
人生初のタイムカードを右手で持って、一人でキョロキョロとパニクっていたら……
この後、いきなり唐突に、
ガサッ…ガサッ…パラッ…パラッ……
と部屋の奥からガサガサとした音が聞こえてきたので
ビックリした玲は思わず慌てて後ろを振り向いてみたけれど
次の瞬間、玲は息を飲んでいた。
なぜなら玲が見たものは………
(……あれは……何?
マネキン…とかじゃないよね?)
と思うレベルの整い過ぎの以下略の、
まるでギリシャ神話の彫刻みたいな超絶イケメンの男性が
狭い事務所のソファーに座って、
謎の書類をパラパラと捲っている光景だったからだ。
*****
そして玲の存在に気付いた超絶イケメンは
優雅な仕草で書類を捲る手をピタッと止めた後すぐに、
なぜか無言で静かに椅子から立ち上がり、
しかもそのままの勢いで玲に向かってドンドン歩いてきたので
(えっ?なんでこっちに来るの?どうしよう!)
とは言えないヘタレの玲は、そりゃあ勿論この直後、
見知らぬ無言イケメンの男にペコペコと頭を下げながら
(無言イケメンさん ごめんなさい!)
と心の中で謝って、
ついでに右手のタイムカードをタイムレコーダーの中にガチャンと放り込み、
そしてそのまま光の速さで慌てて事務所を飛び出して行ったのに……
*****
このあと急いで厨房に戻った玲は、
到着早々このままの勢いで、
豪華なフルーツの盛り合わせを作っている最中の忙しいチーフから
「じゃあそろそろ店が忙しくなって来たので
今からホールで雑用のメンバーをやってもらえますか?」
と仕事の命令をされたので……
もちろん玲はこの後サッサとホールに向かったが
とにかくメチャメチャ社会情勢に疎いコミュ障の玲は
豪華な客席で接客をしている派手なホステス達を見ても尚
未だにClubベルサイユがなんの店であるのかを全く分かっていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!