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初めての真剣白刃取り
そして人生初のホールメンバーに駆り出された玲は
静かなジャズの音楽が流れる広いホールに出た後すぐに
先程チーフに手渡されたチーズの盛り合わせを右手で持って
やはり人生初となる、3番テーブルとやらにドキドキしながら向かっていたが
そんな事よりも、なんだかカオスなこの店は……
*****
「やだ~、社長ったらもうエッチな話ばっかり~」
「そりゃあ男はみんなエッチだからさぁ、
ついつい話がそっちに行くのは仕方がないよエミちゃ~ん」
て感じのトンデモナイ光景だったから
普通のレストランでは絶対に有り得ない彼らの話を聞いているうちに
(えーっと、つまりClubベルサイユって……
裕福な男性のお客さんが高いお酒を飲みながら
美しい女性との会話を楽しむ為の店だったりするのかな?)
と微妙に少しずつ、このお店が世間で言う所の
『大人の社交場』である事が分かってきたから
(なるほどね~、つまり そういう事だったんだ!)
こうして遂にClubベルサイユの謎を解いた玲はスッキリとした表情で
人生初のアルバイトを精一杯頑張る事にしたのだが……
*****
この後3番テーブルに到着した玲は、
「お待たせしました。チーズの盛り合わせでございます」
とお客様に向かって挨拶をした後で
他のホールメンバー達と同じ様に片膝を床に付けながら
広いテーブルの上に料理を置いて、そのままカウンターに戻ろうとしていると、
このタイミングで何故か玲は、
「ありがとうメンバーさん、ミネもよろしくね」
とニコニコ微笑む可愛いミニスカートの女性から、
いきなり空っぽのミネラルウォーターを2本も手渡されたので
何がなんだか訳が分からない玲は取り敢えず
「はい、かしこまりました…」と返事をしてから、
ミネラルウォーターの化粧瓶を持って再びカウンターまで戻っていたけれど
この後いきなり唐突に
「えーっと3番テーブルのミネは僕が持って行くからさぁ、
玲さんはカウンターの中で灰皿とアイスペールを洗ってくれる?」
と先輩のホールメンバーさんから皿洗いの仕事を指示されたので
またまた「はい、わかりましたー」と返事をした玲は
このあと急いでカウンターに向かって皿洗いの作業をしていたが
なんと、この直後……!
*****
ド派手なキンキラキンの店の扉が何故かゆっくりガターンと開き、
そして扉の向こう側から1人の女性がメチャクチャゆっくりと……
とにかくスローな動作で店の中に入ってくる姿をバッチリと目撃したので
(えっと、どうしてあの人だけが
スローモーション再生みたいになってるの?)
と思った玲はこの瞬間、
なんだかやたらと動きがスローな女性の事が気になって、
ついつい彼女の動向をじっと見つめていたけれど……
なぜかこの後も更にゆっくりとカウンターに向かってきた女性はこのままの勢いで
真っ白なロングコートの中からキラッと光る『物』を取り出した後すぐに
(えっ!?あれってまさか…ナイフなの??)
と密かに呟く玲が見ている目の前で
短ドスみたいに鋭利な刃物の柄を両手で握りしめ
そしてこの直後……!
「うわああぁぁぁー!」と大きな奇声をあげながら
黒いスーツを着た男性の背中を目掛けて思いっきり突っ込んで行ったから
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