3、ハッピーラッキーラブ☆トラップアワー

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3、ハッピーラッキーラブ☆トラップアワー

 その夜、平太はギンギンでモカを待った。モカがパパだろうがママだろうが、配偶者がいようが、子持ちだろうが、平太好みの顔をしている色っぽい人であることに変わらず、十中八九がただ話すだけだとしても、夜の一軒家というシチュエーション的に、平太の妄想はとまらない。布団の上で正座したりごろごろしたりうなったりしているうちに夜はふけてゆく。  マロンが風呂を脱走した時にみた半裸の姿が浮かんでくる。見てはならなかったのに、見てしまった申し訳なさで身もだえするが、やはり見てしまったものは見てしまったのだ、いろいろ。  れっきとしたモカ自身を見てしまって、男性とわかったところで妄想はとまらない。ママでパパで人妻で、きれいでかわいく、セクシーだった。モカはあられもない姿で平太の部屋にやってくる。マロンを追って出てきた時のように何も守っていないタオル一枚の姿で。それでは見えてしまいます。そんな頼りないもの、裸と同じです。  嗚呼、いけません、モカさん、いけません。  気づいたらヨガのポーズで眠ってしまっていて、朝だった。  翌朝顔を合わせるやいなや、詫びられた。モカも知らないうちに寝落ちしてしまったようだった。  当然といえば当然だ。日中あれだけ休む間もなくマロンを追いかけて抱っこして寝かしつけ食べさせ授乳し、「これみてー、これみてー」「だっこー! だあっこーー!!」「じぶんで! じぶんで!」という要求にこたえ、散らかしたものの後片付けし、床のおもちゃを踏んづけて転んだりしていれば、夜はくたくたに決まっている。  そしてその次の日の夜も、またその次の日の夜も、平太の部屋にモカが訪れることはなかった。こうなってしまうと、すけべ妄想はさておき、モカが実際のところ何の話をしようとしているのかが気になってしょうがない。時間はどんどん過ぎてゆく。  またあっという間に夜になる。  先ほどまでぐずって暴れていたマロンが静かになり小一時間ほどたった深夜十二時前、平太はおずおずと二人が使っている部屋の前まで行ってみた。おそるおそる小声で話しかけた。 「モカさん? 起きてます……?」  応答がないので、そーっとドアを開けると、今夜のマロンは防水シーツをしっかり敷いた布団から完全にアウトしている。さらに平太の目の前でどんどん転がって、お昼寝に使ってそのままになっている座布団と毛布のところまでたどりつく。  防水シーツの上に戻さねば、と思ったが下手に動かして目が覚めギャン泣きされると困る。お昼寝ブランケットをかけ、いったんそのままにしておく。  モカはというと、平太の気配を感じたのか、むくっと布団から身体を起こした。しかしぐらぐらゆれている。目は半分閉じ、完全に寝ている。 「あ、その、話ってなんだろうって気になって。夜遅くにすみませんごめんなさい。失礼しました」  平太はそそくさと部屋を出て行こうとした。モカはいきなり平太の背中に抱きついた。 「!?」  平太が貸したパジャマの上だけを着て彼シャツ状態のモカは、下は何も履いておらず、ナマのふとももが平太の手の甲にあたる。 「モモモモモモカさん」 「行ってしまうんですか……? 私がこんなに勇気をだしているのに……?」  ぐすっ、と鼻をすする音がした。  まさか泣いている? と思って油断した時、ぐい、と布団の中にひきこまれた。古い防水シーツがごわごわする。  おねしょの被害から守るシーツの上で二人、身体が重なりあう。平太は体勢を取り戻そうと、とっさにモカの尻をがっつり掴んでしまった。 「ももももももごめんなさいごめんなさい」  モカは平太にもたれかかる。そのまま動かなくなる。 「モカ、さん……?」 「…………」  すーすーと健やかな寝息をたてている。  寝てる。これ完全に寝てる。  モカをゆっくりゆっくり布団に戻し、出て行こうとする。しかし、モカはまたくわっと覚醒し、平太を引きとめる。 「お願いっ、行かないで」-  ごそごそと布団の中で動き、なぞの握りこぶしをつきだした。 「とにかく、時間がないのです……もう気にせず、平太さん、私のことは気にせず、このまま好きにし……めちゃくちゃにし……」  煽情的なセリフをむにゃむにゃ言い、再び、気絶するように寝落ちた。平太は今度こそと、細心の注意をはらいながらなんとか布団から這い出した。  おそるおそる握りこぶしを確認すると、モカは自分のぱんつを握りしめている。平太は「失礼します」と言って、あまり見ないようにしながら、脱ぎたてのそれを丁寧にたたみ、枕元に置いた。さすがにマロンのようにはかせてやるわけにはいかない。  布団からころころころがって出てしまっていたマロンは、またころころと来た道をころがって、勝手に布団に戻った。平太は一つの決心をして部屋を出た。
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