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それから平太は、モカにくっついて離れようとしないマロンに積極的にからんでいった。うまくいかなくても泣かれても、距離をはかりながら、めげずにあの手この手で気を引いた。
機嫌がいいと、少しの間は平太との遊びで間がもつようになった。しかし眠くなったり疲れるとモカにべったりだった。そこをなんとかがんばる。
できるだけモカを休ませたいし、マロンが少しずつ懐いてくれている手ごたえが嬉しく、へこたれなかった。
マロンを見ていると日々新しい発見がある。子どもは全力で世界に立ち向かっている。
マロンについて思ったこと、気づいたことをモカに話すと、モカの表情がふんわりと幸せそうにほぐれて、会話がはずんだ。このところ眉間にギュッと力が入っていることも少なくなってきている気がする。
平太には何よりそれが嬉しかったし、ますますマロンを観察し、さらにマロンをかわいく思うようになった。モカとマロンとの三人での生活は、初めて感じる種類のわくわくとどきどきと喜びに満ちていて、刺激にあふれていた。
ある日、機嫌のいいマロンと庭先で土を掘って遊んでいる時だった。
平太が庭から家の中の様子をうかがうと、洗濯物を畳んでいたはずのモカの姿がない。こねていた泥だんごを置いて家の中をのぞくと、タオルとシーツにうもれるように倒れているのが見えた。
「モカさ……」
驚いて声をだしそうになったが、さらに様子をみると、眠っているだけのようだった。
(っしゃ)
平太は小さくガッツポーズをする。大判のバスタオルを上にかけ、穴掘りに熱中するマロンの元に戻った。喜びをかみしめる。
最初と比べてずいぶん気を許してくれるようになった。
寝顔はマロンそっくりの、天使のような顔をしていた。
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