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「きゃあぁぁぁっっ!」
「やめろっ!」
―――カシャーン!
「…っふざけるなぁ…!離せぇっ!」
叶夢が私に完全に覆いかぶさっているので状況がわからないが、女性の悲鳴と誰か知らない男の叫び声が聞こえ、驚いた。
続いて「大人しくしろ!」など、大勢の声。
「叶…夢、離れて。ねぇ、どうしたの?」
全く動こうとしない叶夢を「兄ちゃん大丈夫か!?」と何人かの男性に起こしてもらったが、「なんでぃ、アンドロイドか。いい仕事したな」と地面に寝転がされた。
仰向けに寝かされた叶夢は目を見開き、無表情だった。
私達のそばに、1本のジャックナイフが落ちていた。
「お前の父親が俺の会社を潰したんだ!お前の飯代は俺の会社の犠牲で賄われているんだよ!畜生!!」
数人の男に取り押さえられている男が叫ぶ。
「聞…カナイ…デ」
叶夢は無表情のまま口を動かし、左手が私を探すように地面を撫でる。
「叶夢!一体何があったの!?」
私は叶夢のそばに寄り、左手を手に取った。
「そのアンドロイドは姉ちゃんが刺されるところを庇って刺されたんだよ」
「あー、こりゃモロ信号伝達系統やられたね。……スクラップかな」
とてつもなく恐ろしい言葉を、野次馬の誰かが小さな声で囁いた。
「……博愛ハ…無事…?怪、我…ハ無イ?」
「叶夢!私は無事だよ!どうしよう、パパに…パパに連絡…!」
私は震える手で携帯を鞄から取り出す。
「……僕ハ、モウ無理。バッテリー…モ断…線。予、備、電源…落チタラ、僕ハ…消エル」
「えっ…どういうこと!?」
「アンドロイドは情報流出を防ぐために主電源が落ちた時、記憶装置を物理的に破壊するように出来ているんだよ」
アンドロイドに詳しそうな男が野次馬の中から教えてくれた。
つまり、叶夢と……叶夢の人格とは永遠にお別れという事になる?
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