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「叶夢、嫌だ。消えないで…!」
嘘だ。叶夢がいなくなるなんて考えたくない。
「ネェ…博愛、聞イテ」
叶夢は無表情のまま、抑揚のない声で話す。
「僕ハ、今、消エル事ニ…ホッ…トシテイルンダ」
「ダッテ……僕ハ、博愛ガ、誰…カト結婚スル、望ム…ケド、見タクナイ」
叶夢の見開いた目から、一筋の涙がこぼれた。
「……アンドロイドデモ、悲シイ、アル」
私の目からは既に大量の涙がこぼれ落ちていたが、構うことなく叶夢の言葉にじっと耳を傾けていた。
「オ願イ、博…愛。モウ、アンドロイド…雇ワナイデ。博愛ノ、アンドロイドハ……僕ダケニシテ。…僕ダケガ……博愛ノ…」
「うん、うん、わかった。私のアンドロイドは、叶夢だけだよ。叶夢だけが…」
ピクリ、と握った左手が反応した。
「アリ…ガトウ。博愛、愛シテイル……」
「叶夢…2年間ありがとう。私も、叶夢を愛しているよ」
私は叶夢の左手に頬ずりする。
「――――――――――――」
「叶夢?……叶夢!?」
―――パンッ!
叶夢のボディから何かが弾ける小さな音がした。
それっきり、叶夢は動くことも話すことも無かった。
私の最期の言葉は…叶夢に伝わったのだろうか。
『愛される』という夢を、叶夢が叶えてくれた。
『愛する』という事を知らなかった私に、叶夢は愛を教えてくれた。
ありがとう、叶夢。
私は駆けつけた警察官に保護され、叶夢は業者の手によって回収されていった。
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