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「お腹空いた。どこかでアイスクリーム買ってきて。チョコミントじゃなきゃ嫌」
「足が痛い。もう歩けない。お姫様抱っこして」
デート中、叶夢は私のどんなワガママも、笑顔で叶えてくれた。
アンドロイドでも食事をするには問題ないようで、テーブルマナーも心得ていた。
私の財布に頼らず、ディナーの支払いまでしてくれた。
今までの彼氏は、私が支払って当然のように振るまってきたのでちょっと嬉しかった。
「今日は楽しんでもらえたかな。明日も明後日も、博愛さんが呼べばいつだって駆けつけるから」
叶夢は普通の彼氏のように、私を家まで送り届けた後どこかに帰るようだ。
「明日叶夢を私の友達に紹介するから、高校終わった頃に迎えに来て。そのままみんなでスイーツバイキングに行くわ」
そう言うと叶夢は困った顔をした。
「僕、お金を全部服と今日のデートに使ったから…奢れないよ」
叶夢は男が会計をするものだと思っていたのか。
所持金を今日のデートにつぎ込んでくれたなんて、馬鹿みたいだけどちょっと嬉しい。
「別に叶夢を充てにしていないわよ。元々バイキングの予定はあったんだし、みんな私のパパのお金を充てにしているだけ。だけど、パパは叶夢を買ったんでしょ?そのお金は?」
今やアンドロイドが労働の要の時代とはいえ、精巧なアンドロイドを買うなんて、きっと莫大なお金が支払われたはずだ。
「うん、研究所には沢山お金が入ったけど、僕自身にはそんなに。だけど博愛さんと付き合うことになったから…成功報酬くらい貰えるかな」
成功報酬……。
そうだ、叶夢は所詮私と付き合う役を演じているだけ。
愛している、なんて無条件で刷り込まれた感情。
そもそもそれを感情と言えるのか…。
目の前のイケメンアンドロイドに心を開きかけていた私は、結局普通の男と変わらない、お金が全てなのかと残念な気持ちになった。
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