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「千笑、大丈夫……か」
「イタタタ。なんとか大丈……夫」
打ったおでこを撫でながら目を開けると、一緒にこけた遼河の顔がすごく近くにあった。目が合うことはよくあるけど、こんなに近くは初めてで……ちょっとドキッとした。ビックリしたからだけど。
「ご、ごめん」
謝る遼河も少し照れているようだ。なんか変な感じ。
「な、なんかビックリしたね」
「ほんとごめん」
あちこちぶつけた身体をようやく起こした。まだ大きく脈は打つ。お尻や肘とか、いろんなところが痛むけど、私はまだ顔が熱い。
「遼河、さっき何か言おうとしてた?」
言った途端に、遼河と再び視線がぶつかる。え、この間は何。何を私に言いたいのかな。
「いや。今はいいや。クモやっつけるのが先でしょ」
「そうよ! どこ行った!?」
クモのことを思い出して、また脈が早く打つ。じわじわと迫ってくる恐怖で体が震えてしまう。
どこにいるのか分からないから、余計に不安になる。でも遼河がいるから多分大丈夫、だと思いたい。
同じように怖いはずの遼河が、クイッ◯ルワイパーを再び手にした。
「アシダカグモは巣も張らないし人を襲わないし、益虫だからGを食べてもらったらいいのに……」
「共存は無理だってば! クモと一緒に裸は無理だから!」
「ん? 何の話だよ」
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