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さっきまでそこにいたのに、こけてる間にまたいなくなってる。
「どこ行ったんだよ、アイツは」
遼河がクイッ◯ルワイパーを両手で構えて戦闘体制に入る。しかし見当たらない。
「やっぱり出てこないことにはどうにもならないね」
キョロキョロしながら遼河は床に座った。私も恐る恐る腰を下ろした。座ってもどこかにアイツがいると思うと落ち着かなくて、小さなことにもビクビクしてしまう。
「で、さっき言いかけてたのは何?」
「ええと、あれだ。そのぉ〜……」
はっきりしない態度がじれったい。
「今日、千笑に呼び出されて、何か……言われるのかなって思ってたんだよね」
恥ずかしそうにもじもじと話す遼河が、いつもと違って違和感しかない。
「あ、そういえばこの前貸したお金返してもらってない!」
「え、あ、ごめん。二千円だっけ」
「そうだよ! 貧乏学生には貴重な二千円なんだから、早く返してよね」
「忘れないうちに今返しとく」
ズボンのポケットから財布を取り出した遼河は、私に貴重な二千円を返してくれた。
「ありがとね〜。でも、さすがにこんなことでわざわざ呼び出したりしないよ。私をどんなヤツだと思ってんのよ」
ケラケラ笑う私。二千円返せって呼び出すなんて、そんなことするわけないでしょ、遼河と私の仲なのに。
「いや、そうじゃなくて……」
「え? 違うの?」
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