そうじゃない

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 うまい言葉が出てこないのか、遼河はまごまごしている。 「お、俺さ、ずっと前から……」  言いかけた遼河には申し訳ないけど、最後まで聞く余裕は一瞬でなくなった。 「うわぁ〜!! 出たぁ!!」 「なんだよ! またかよ!」  クイッ◯ルワイパーという武器を手に入れた遼河は、再び戦闘体制に入る。 「本当に……何度も邪魔しやがって! とっとと追い出してやる!」 「いいぞ! 任せた、遼河!」  ジリジリと距離を詰める遼河の背中は、やる気に満ち溢れて本当に頼もしい。ていうか、邪魔? 何の? ……まいっか。  めいっぱい伸ばしたクイッ◯ルワイパーの先が近づくと、気配を察してすぐにアシダカグモが移動する。  ドキドキしながら先回りして、ベランダの窓を開けた。遼河が窓に追いやって外に出そうとしたのが分かったからだ。 「ナイスアシスト!」  遼河の真剣な横顔に、汗が垂れた。アシダカグモは徐々に窓の方へ移動している。  ――あと少し! 頑張れ、遼河!  褐色の長い足は気色悪く動いて、窓の方へ逃げる。私は顔の前で指を組んで、早く追い出してと祈る。  クイッ◯ルワイパーに追われたアシダカグモは、素早くベランダへと逃げた。すかさず遼河が窓を閉めて、やっとこさ私の部屋に平穏が訪れた。
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