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汗が光る額を、遼河は無言で拭った。
「あ、ごめん、気付かなくて」
私はタオルを取り出して遼河に渡した。そして冷蔵庫に入っていたサイダーを一本取り出した。
「これ、あげる。クモのお礼」
「ありがとう……」
白いタオルに顔を埋めて、汗もスッキリして気持ちよさそうだ。そりゃそうでしょう、日本三大タオル産地の一つ、今治タオルなんだから!
「今治タオル気持ちいいよね。実家からいっぱい持ってきちゃった」
「あ、あのさ、今日のことで、なんか、前よりも好きになっちゃったというか……」
「え、クモが!?」
「く〜! そうじゃなくて!」
遼河は大きなため息をついた。
「なんか、もう疲れたから帰るわ」
「そうだよね。クモ退治でバタバタしちゃったしね」
「そうじゃない……もういいや。じゃ、また明日ね」
「うん、今日は本当にありがとうね!」
感謝の気持ちを込めて、玄関先から手を振った。角を曲がって見えなくなるまで見送った。
それにしても遼河があんなにクモに詳しいなんて知らなかったな。嫌い嫌いって言ってたけど、嫌よ嫌よも好きのうちって言うし、今回のことでちょっと好きになってきたっぽいし、またクモ出てきたら遼河に頼もう。
ふふふと笑みがこぼれ、玄関のドアをゆっくりと閉めた。
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