51|降臨コーリング

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51|降臨コーリング

 四度目の、中学三年の春が来た。  結局、時はまた四月七日の火曜日でリセットされ、一年前の四月八日、月曜日につながった。  そろそろ、「新しいカレンダーを買わなくて大変よろしい」などと言っている事態ではなくなりつつあるいつものメンバーは、現在下校中である。  クラス替えもされず、担任も変わらず、授業内容も同じでいい加減退屈な学校生活になってきた――と思いきや。 「なんで!? なんでカリキュラム変わった!? なんで教科書内容足された!? なんで高校の範囲突っ込んできた!? なんで!?」 「時間のループも、知っての通り、全く同じ歴史を繰り返すわけではないからね……。人々があたかも不可逆的な時間上を生きているように行動する限り、こういうこともあるよ」 「くっ……変更後の授業内容も分かるからって、冷静な意見述べやがって……! 君臨者は何考えてんだよ!」 「たぶん、私たちの勉強事情は考慮してないと思うけど……」 「薄情な! おい、アワ、フー! フィライン・エデン代表として、おたくの世界の神様に物申せ!」 「おたくの世界の文科省に物申しなよ」  拳を握り締めて歯ぎしりをする氷架璃、それをまあまあとなだめる芽華実、呆れ顔の学ランなアワと苦笑いするセーラー服なフー。そして、後ろを遅れ気味についてくる、最後の一人。  その最後尾の彼女を、氷架璃が勢いよく振り返る。 「あんたも何か言えよ、雷奈!」 「ん?」  きょとんとした笑顔で氷架璃を見上げる雷奈の手には、スマホ。  氷架璃の目が、糾弾の三角になる。 「あんた歩きスマホしてたのかよ! どうりで遅いと思ったわ!」 「危ないわよ、雷奈」 「えへへ、ごめん」 「で、話聞いてたか?」 「え? うん、聞いとった聞いとった」 「確実に聞いてなかっただろ」 「聞いとったよ! 私もそう思うったい! 絶対チョコソースかけたほうがおいしかよ!」 「確実に聞いてなかったな!?」  気が立っていた氷架璃の矛先が文科省から雷奈に向いた。  どこをくすぐってやろうかと手をわきわきさせる氷架璃――の眼前に、ずいっとスマホが突き出される。 「見て、氷架璃! 芽華実も! 新しいフラッペ、バナナフレーバーだって!」  目をキラキラさせる雷奈に、二人は顔を見合わせた。雷奈は歩きながら、熱心に人気チェーンカフェの新作を調べていたのだ。 「絶対チョコソース合うったいね! ね!」 「それの話かよ」  肩をすくめてため息をつく氷架璃に、芽華実は困ったように笑いながらも、おっとりと言う。 「でも、いいじゃない」  芽華実の瞳は、スマホを両手で突き出して目を輝かせる無邪気な少女を、この上なく尊いものを見るように映していた。 「こういう日常が、私たちが願った去年のクリスマスプレゼントなんだから」
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