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「あかんて。それ捨てたら」
父ちゃんが、急いでダンボールに入った不気味な木彫り人形を取り上げた。
「なんでよ。ええ加減処分せな、ここもいっぱいになってきてるやん」
「いや、まあ、それはあかん」
父ちゃんは、不気味な木彫り人形を棚に戻してそう言った。
「じゃ、こっちの半分、ひとまず処分しましょ」
母ちゃんは、ざっくり棚の半分を指差した。
「いやいや、あかんて。どれも大事な宝もんなんや」
「何が宝もんやの。埃かぶってるやん」
「で、でもなー」
まごまごしている父ちゃんをよそに、母ちゃんは棚のものをダンボールに詰め始めた。
「おい! おーい!」
父ちゃんの声も虚しく、棚のものがダンボールに入れられて行く。
それからしばらく、父ちゃんと母ちゃんは言い合っていた。
けど、結局は父ちゃんが「お土産」として誰かに買ってきてくれた事が仇となって、母ちゃんの「私はいらん」という一言で、処分されることになってもうた。
ちょっと父ちゃん可哀想やな。と思った。
「なっちゃん、これ、なっっちゃんへのお土産らしいけど、いる?」
母ちゃんは不気味な木彫り人形「髭のおっちゃん」を差し出した。
「いらん!」
わいは、間髪入れずに答えた。
ごめんな父ちゃん。これはいらんわ。なんか不気味やし怖いんやもん。
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