これからもよろしく

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 その日の晩、父ちゃんと母ちゃんは喧嘩した。  結局、父ちゃんがみんなへの「お土産」として買ってきたもので、いらんもんは処分することになったんやけど、喧嘩の原因はそれだけではなく、父ちゃんが結構な額でそれらを買ってきていたことがわかったからや。なんとあの不気味な木彫りの置物も五千円はしたらしい。 「お金ないのに、なにアホなもんばっかり買ってるの!」 「いや蚤の市で買ったんやで、みんなのお土産で買ったんやで」 「金輪際、お土産は買わないでください」 「いやでも」 「買わなくていいから!」 「……」 「お金なくてどんなけ困ってる思ってんの!」 「……」 「困るだけ。ゴミが増えるだけ!」 「……そこまで言うこたあないだろ。みんなのお土産で、喜ぶかなと思っていろいろ回って面白そうなもん見つけて、笑うかなって……」 「いりません!!」  母ちゃんがピシャリと言った言葉で場が凍りついた。  父ちゃんが大きく息を吸い込んで吐く。  その後も二人はしばらく言い争っていた。  母ちゃんは怒り出すと、全然関係ないことを次から次へと言い始めるから手がつけられへん。  アワワどないしょ。と思ってると、父ちゃんはバン!と扉を激しく閉めて、家を出て行ってもうた。どないしょ、どないしょ。  わいはチラッと段ボールに入っている物を見た。不気味な置物を始め、訳のわからんもんがいっぱい入ってる。まあ、母ちゃんの気持ち分かるは、わいもあの不気味な木彫りの置物なくなったら、ちょっと安心するし。それに、うちお金ないのは、わいでも分かるからな。それやのに、こんなに買ってくるなんて……  でもなあ……  わいは、自分の棚の上にあるブルートレインのプラレールや、D51のプレート、かっちゃんの手作りの車を見た。大事なもんは大事やねんもんなー。それに一応お土産やしなー。わいは迷路の本をもらった時は喜んだのを思い出した。父ちゃんの気持ちも分かるわ。  あー、嫌やなー。こんなんやったら、別にフリーマーケットなんてしなくても良かったのに。もう楽しむどころやないわ。このまま、お父さんとお母さん別れてもうたらどないしょ。  その日の晩。  和室には、わいと母ちゃんの布団しか敷いてなかったし、父ちゃんはアトリエから帰ってこんかった。  なんか涙出てきた。  ……どないしょ。
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