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自分達の場所に戻ると、母ちゃんがえらい神妙な顔をして父ちゃんのお土産を段ボールに丁寧につめていた。
「どないしたん?」
母ちゃんが声をひそめて答える。
「売れたんよ、全部」
「全部?」
「そう、2万2千円」
父ちゃんのガラクタは22個ある。つまり千円が22個、ようわからんけど、うまい棒は大人になるまでずっと食えるかもって思った。
横を見ると、おじいさんがニコニコしながら立っている。
「母ちゃん、ちょっと待って」
わいは段ボールの箱の中から木彫りの髭のおっちゃんを取り出した。そして、持ち帰った女性の方を合わせて見る。やっぱりピッタリや!
アンバランスな格好の二人が、ピッタリとくっつく。足りないところが、微妙な傾きが、奇妙なチグハグが、互いが互いに溶けて消えて行くように重なった。
「もう、寂しく無いやろ」ってつい声が出た。
わいは、父ちゃんの品物が全部なくなってしもたんが急に寂しくなって、そんで、これはわいへのお土産屋っていうの思い出して……
「母ちゃん、お願い! これだけ置いといて!!」って言ったんや。
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