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幽霊やお化けなどの心霊現象を信じてない人でも、今まで生きてきた中で1度や2度3度4度ぐらいは、なにかしら不思議な体験などした事あるんちゃうかな。自分もその類は信じる方ではないし、霊感なんてまーたくないけど、不思議な体験は5度ほどある。
今日はその中から一つ、小学2年生の時に起きた出来事を書こうと思う。とは言ってもそんなたいした話ちゃうし、何か重大なことが起こるわけでもないけど、ましてや感動なんてものは皆無やけど、フッと書こうと思ったんや。夏の終わりに思い出す話。
今まで誰かに話そうとは全く思わなかったのに。何故か今。
それもまた不思議なんやけどね。
× × ×
わいの名前は涼石夏生。
これはわいが小学2年生の頃を思い出しての話。
ちょっと、結構、昔の話。
2学期の小学校が始まって、近場の公営プールにも行かなくなり。「あー夏が終わったなー」って思って家のリビングでのんびりアイス食ってた時、母ちゃんが今まで聞いたこともないイベントを持ってきた。
それはフリーマーケット。
今でこそ、いろんなところで開催されているフリーマーケットやけど、この頃はまだそんなにメジャーじゃなかったし、小学2年生のわいはその存在自体を知らんかった。呼び方も、フリーマーケットじゃなくて、ガラクタ市だった様な、ガレッジセールだった様な……
まあ、地域イベントで何かしら家でいらなくなったものを売り出して、物物交換しようというものやった。
「あんたの小さなった服だそか」
母ちゃんがタンスから、わいが保育園の時に来てた服を取り出した。
「これ売れるん?」
「買ってくれる人がおったらね」
「へぇ〜。ええやん」
「売るって言っても、ほとんどタダみたいなもんよ」
わいは、あまり着ずに小さくなってしまった仮面ライダーのパジャマを持ち上げた。
「もう着いひんようになった服でも、また誰かが買って着てくれれば、服も喜ぶし、相手も得するし、ちょこっとでもお金入ってくるから、うちらも得するし」
母ちゃんはそう言いながら、テキパキと服を畳んでは段ボールの箱に仕分けていった。
「そして1番ええことは部屋が片付くことやね」
母ちゃんが、服を並べて行くのを見てわいは思った。お店屋さんやん。
「わいもやりたい! なんか売りたい!」
「そ、じゃ。あんたもなんかいらんもんもっといで」
「おー!」
わいはさっそく、自分の部屋に行くとおもちゃ箱を漁った。仮面ライダーやろ、迷路の本やろ、この辺は売りたないしなー。プラバンと画用紙で作ったスーパーマリオは、あれから遊んでへんけど、これは大事やからな。うーん。
あとは、折り紙とか、段ボールで作った剣とか、粘土の怪獣たちとか、手裏剣、輪ゴム鉄砲、竹とんぼ。なんや、わいが作ったものばっかりやん。
うーん。どないしょ。
わいのお店が開かれへん。って考えてるとある考えが頭に浮かんだ。そやっ、父ちゃんのアトリエや! あそこに行けば、いらんもんいっぱいあるわ。
画家の父ちゃんは近くのアパートに一部屋借り、そこをアトリエと呼んでしいる。そしてそこの半分は父ちゃんが外国に取材にいった時のお土産で埋もれとった。派手な羽のついた仮面やろ、誰がかぶるねんっていう真っ赤な帽子(ハンチング帽)やろ、知恵の輪の様に紐のからまったマリオネット、そして謎の小さな鍋に穴の空いた蓋がついたものなど。
「お土産」と言って買ってくるけど、誰も受け取らへん変なものばっかりやから、結局全部アトリエ行きや。
「母ちゃん、ちょっと父ちゃんとこ行ってくる」
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