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演奏し終わって、藍は「音うわずっちゃった!」とペロッと舌を出してから、ごめんごめんとサナに手を合わせていた。
あんなにも素晴らしい演奏だったのに、それでも納得できないのか。
……と言うか、さらに理想を目指すからこそ打ち込むことが面白いし、上達もするということなのか。
そうして、いろんな経験をして、人の心は育まれていくのかもしれないと、その時にふと思った。
それに、愛しい気持ちも、豊かな心も、完璧じゃないからこそ美しいのかもしれない。
それがひょっとしたら個性というものなのかもしれない。
だいたい、完璧なんていうのは、誰にとってのものなのだろうね。
きっと完璧なんて、人それぞれ違うものなんだろう。
なんて思いつつ……。
その後、何回か音合わせした後で、僕たちは帰路についた。
夜空に浮かぶ月を見ていると、ついつい、さっきまでの藍の演奏を思い出していた。
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