月の光

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 その間の藍は、なにやらいつも以上に集中して、ノートに何かを書き込んだ後は、教科書の隙間に隠しているスマホをいじっていた。 そして、放課後になって 「ねぇねぇ、これ見て?」  そう言って、スマホの画面を僕に見せる藍だった。  そこにはCGで描かれている、とてもかわいい感じの女子高生のアニメ絵があった。 画面のなかで時々揺れながら、瞬きもしている。 「かわいくない? AIってすごいよね!」  そう言ってから、 「こっちが私が描いた原画! こんなひどい絵が、こんなになっちゃうんだもん」  と、自虐的に、藍自身がノートに描いたものを僕に見せた。  鉛筆で描かれたそれは、どことなく藍自身に似ている。 「スマホのは確かにすごいと思うけど、僕は、藍が描いた絵の方が好きだな」  僕はそう言ったんだ。  だって、ちゃんと描いた息づかいがそこにはあるから。 「そう?」  そう言って、不思議そうに首をかしげる藍は本当にかわいい。
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