月の光

　別館の校舎の階段を上がり、左の角を曲がってややくすんだ引戸を左にスライドさせて音楽室に入った。

　左側には、白黒のパネル写真が何枚か張られている。
写真の中のメンバーは、各々が椅子の上で楽器を構えて、ステージ中央にいる指揮者に視線を送っているのがわかる。

　それらを見ていると、かつてのブラスバンドはとても優秀だったのだと感じる。

　もちろん、今のブラスバンドの音色もすごいと思う。ただ、強豪校が連立している現在においては、優秀と周囲に認められるのは大変なことなのだろう。

　さらに、奥の壁の上に掲げられている偉大な音楽家たちのポスターは、ベートーベンとモーツァルト、それからバッハくらいならすぐにわかる。

　少し視線を窓にずらすと、青空が広がっていて、遠くの方に雲がいくつか浮かんでいるのが見える。こちらに向かって飛行機雲が長く伸びていることから、明日はひょっとしたら雨なのかもとも思った。