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4.救世主
しばらくは何も手がつかないほどまでに落ち込んだが、ふと冷静になって気付く。
キャスリンの話が本当かどうか、ライナスや両親に確かめないと。
だが、間が悪かった。
ライナスは子爵家を継ぐ兄について隣国へ渡っていて、すぐには連絡が取れない。そしてアシュリーの両親も、親しくしている貴族の領地に視察に出ていて、簡単に連絡が取れない状況だった。
一応手紙は送ったが、いつ返事がくるかわからない。
事がはっきりするまでは外に出たくないと思っていたが、いつになるかわからない。その間ずっと学園を休むわけにもいかず、アシュリーは重い足を引きずって登校する。
だが、登校するとキャスリンがやって来て、あれこれと耳に入れてくる。申し訳ないといった顔をしながらだ。本当にそう思うなら、放っておいてほしかった。
しかしそんなことを言えるはずもなく、アシュリーの心はどんどん疲弊していった。
そんな時だ。ブルーノに出会ったのは。
気晴らしをしようと、王都で買い物をしていた時だった。
やけに見目のよい男が近づいてきて、気軽に声をかけてくる。咄嗟に警戒したアシュリーだが、彼の明るく社交的な口調に乗せられ、一緒にお茶を飲んだのが事の始まりだった。
楽しいひとときを過ごせてよかった、アシュリーとしてはただそれだけだった。だが、ブルーノの方は違った。
彼は女好きで、少しでも好みであれば声をかけて口説くような軽薄な男だった。学園でも、たくさんの女性との噂があった。
しかし、アシュリーは学年が違っていたし、人の噂話には興味もなかったので、それを知らなかった。だから、彼の誘いに乗ってしまったのだ。
この日を境に、ブルーノはアシュリーに構うようになった。
アシュリーは迷惑に感じていたが、身分はあちらの方が上、また上級生でもあるので、はっきりと拒絶できない。
どうすればいいのかと追い詰められ、食事も満足に喉を通らなくなった頃、アシュリーの元に救世主が現れた。
彼に全てを打ち明けたところ、彼はアシュリーを抱きしめ、こう断言した。
「全て解決するから、大丈夫だよ」
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