表情観察感情読取機『Refa(リーファ))』

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 想像力というのは使い方次第で武器にも凶器にもなりうる。  都内有名大学を卒業した両親から生まれた俺は、幸いにも想像力に恵まれていた。自分の行動がどんな結果を招くのか大体のことは想像できる。  しかし、どれだけ想像力が豊かでも人間の感情まで想像することはできなかった。  今から5ヶ月前、中学2年の5月頃のことだ。当時、俺の後ろの席にいた女子が積極的に俺に対して話しかけてきた。  授業で分からないところがあったらすぐに聞いてきたり、グループワークで席をくっつけたら俺の筆箱を探って中身を確認してたり、俺が困っている時はすぐに声をかけて手伝ってくれた。  ある程度の想像力があれば、彼女が俺に好意を抱いていると思うに違いない。少なくとも俺はそう思った。だから彼女に聞いたんだ。「お前って俺のこと好きなの?」って。そしたら、彼女に「馬鹿じゃないの。そんなわけないでしょ。キモッ」って罵られた。その日から俺はクラスの笑い者になった。  ナルシストや変態妄想野郎と言われる日々。今思い起こしても、どうしてそこまで言われなければいけないのか意味がわからなかった。  もうあんな失敗は起こさない。そのために俺は下校すると部屋に閉じこもって『Refa』の作成に勤しんだ。  通称『Reading emotion from aspect』。その名の通り、表情から相手の感情を読み取るアプリだ。これを使えば、表情から相手がどんな感情を抱いているのかが手に取るようにわかる。それ以降、俺は自分に頼らず、全て『Refa』が解析した感情に従うことにした。そうしたら、面白いことに誰も俺のことをよく思っていなかった。積極的にアプローチしていたのは優秀である俺を落とすことを楽しんでいるだけだったらしい。  それからも俺は『Refa』の解析に従うことにした。これさえあれば、俺は対人関係において何一つ間違った選択をせずに済む。そう思っていた。  ただ一人の生徒を除いては。  それが相川だ。  俺がからかわれていた時、彼女だけは前と変わらず俺と接してくれた。彼女は何を思って俺と接してくれているのだろう。そう思い、『Refa』を使うと答えは『無関心』だった。それだけなら、失望して終わりだ。ただ、彼女はあらゆる物事に対して『無関心』だった。  俺は彼女の存在が不思議でたまらなかった。  彼女が何を思って日々生活を送っているのかとても気になった俺は、終始彼女を観察することにした。それから4ヶ月。彼女の感情は依然として『無関心』のままだった。代わりに俺の彼女に対する『関心』だけが増すばかりだった。
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