さまよう女神の話

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さまよう女神の話

 慈悲の女神・ミョニルは、三姉妹の長女だった。彼女が恋に落ちたのは、同じ神ではなく人間だ。名をユヴェイという、誠実な青年だった。ミョニルはユヴェイと夫婦になり、彼が国を起こすのを手伝った。ヴァシンと名付けられた国は、誠実で勇気ある王と優しく慈悲深い妃によって、豊かで活気のある国となった。  けれどヴァシンの国は滅び、ヴァシンの民は死に絶えた。神と祀る者たちがいなくなり、三姉妹は神ではなくなった。  人にもなれない三姉妹は、永遠の命だけを持ったまま大地をさまよわねばならない。  次女であり知恵の女神であったジガミは、隣国に住むカーシオンという若者に取り入り、神に戻ることができた。  けれど勇気の女神・サメニは、夫を亡くした姉ミョニルを放っておけず、神に戻れぬまま姉に寄り添うことを選んだ。  夫を亡くしたミョニルは、気がふれて夢の世界で生きている。起きながらにして夢を見る彼女を捨てる勇気を、サメニは持たない。  今も二人は、どこかの花園で永遠を生きているらしい。
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