ふたごのハス

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 春香は遠くを見つめ、スニーカーのつま先でブランコを小さく前後させた。 「行ってみないとわかんないよ」  陽太も足で少しだけブランコを揺らす。 「行きましょう!」  春香が勢いよくブランコから飛びおりた。 「うん、行こう!」  春香の勢いにつられ、陽太も慌ててブランコから飛び降りる。 「でも、森と池、どこにあるんだろう?」  立ち上がったものの、陽太はどこに行けばいいのか見当もつかない。 「きっとあそこにヒントがあるわ」  春香には夢の中にピンとくるものがあった。 「あそこって? 夢にグーグルマップでもあらわれたの?」  陽太は春香に先を越された感じがして、ちょっと悔しい。 「陽太ちゃんだったら、すぐに思い当たるはずよ」  春香は優しい眼差しで陽太を見つめる。 「思い当たるって?」  そう言われても、陽太には少しもピンとこない。 「森と池の夢を見るとき、いつも同じ道があらわれるの。陽太ちゃんはどう?」  春香はそういって陽太の顔を覗き込む。 「そういえば……」  陽太は目を閉じて記憶を辿ってみた。 「どう?」  彼の傍で春香がじっと見守っている。 「……思い出した!」  陽太が声をあげ目を輝かせた。 「ね! でしょう!」  春香は嬉しくて大はしゃぎする。 「道、あの道だよね」  陽太の夢の記憶もリアルに蘇った。 「小学校の東の門を出て、北にまっすぐ行く道よね!」  春香が学校の東門の方角を指さす。 「うん、小学校の東門を出て正面にある文具屋の前の道だね」  陽太もすぐに、文具店の前を南北に延びる二車線の道路を思い出した。 「その道を北にまっすぐ行けば、夢の森にたどり着くはずよ」  春香はまるで少年のように瞳を輝かせている。 「森まで何分ぐらいかな?」  あの道をまっすぐ行けば、陽太も夢の森に着くだろうと思うのだが、森までの距離は見当も付かない。  果たして自転車で行けるところなのか?  車でないと行けないほど遠くなのか?  陽太は少女のように行くのを躊躇った。 「わかんないわ。でも、きっと自転車で行けると思う」  春香はさっさと公園の駐輪場に向かって歩いて行く。 「今から行くの?」  慌てて陽太が追いかける。 「もちろんよ」  春香はこうと決めたら動くのが早い。  こんな時、いつもリーダーシップをとるのは春香だ。 「わかった。一緒に行くよ」  慌てて陽太は追いかけた。
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