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「インスタにアップしたよ。ほら、私たち双子の姉弟ね」
春香は大喜びしてスマホの大きな画面を陽太にみせた。
たしかに背格好も同じだし、二人ともウズラの卵みたいに小顔だ。
「でもどうしてぼくが弟なわけ?」
同い年だけれど誕生日からすれば陽太の方が早い。
「だって私がいつも陽太をリードしてるから」
春香は正面から陽太を見て、どうだと言わんばかりに首を横に傾けた。
「確かにその通りだね」
陽太はぐうの音も出ない。
「カワイイ」
春香はまるで本当の弟みたいにギュウと陽太をハグする。
「わ、わかったから」
恥ずかしくて陽太の頬は真っ赤に火照った。
「小学三年生の時までは、いつも一緒に遊んでくれたし手もつないでた。でも四年生から陽太は急に私を避けるようになったから凄く寂しかったよ」
「春香のこと嫌いになって避けてたわけじゃないんだ。ただ……」
「ただなに?」
「何って言うか、クラスメイトから見られたら、冷やかされたりするし」
「平気よ!」
「そ、そう……」
「仲が良くて何が悪いの? 周囲のことなんか気にする必要なんかない。海外のドラマを観たりネットの動画を見たりすると、同い年なのに自由で伸び伸びしてる。教室でも通りや公園でも友達同士でハグしたり頬にキスしたり。周囲も気にもとめない。この国にいると凄く息苦しい。どこにいても誰かに監視されているみたい。私は自由でいたいの。でもこんなこと親や先生に相談したら、きっと心の病って決めつけられるわ」
春香がこんな難しい話を陽太に打ち明けたのは初めてだった。
きっと分かってくれると信じてのことに違いない。
「僕も息苦しさを感じているんだ。小学校に入学して毎日毎日決まった時間に学校に行くのが凄く嫌だった。でも一番嫌なのは何もかも決められていることかな。行きたい学校を選べない。クラスを自由に選択できない。好きな先生の授業を指名できないなんてあり得ないよ」
「うん、うん、凄く分かるわ! 私、同じように並んだり朝礼したりするの窮屈よ。特に小学生になってランドセルを押しつけられたこと、鞄も靴も決められたルールに従わされたから、もうそれだけで憂鬱になの」
「僕たち似てるんだね。周囲と合わせないから嫌がられるんだ。クラスにも近所の大人にもいるよ。合わせない人をみつけたら合わせるように無言の圧力かけてくる人や、余計なお節介言ってくる人が」
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