老人期、そして

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老人期、そして

 壮年はいつしか老人となった。    アランは指導者の地位を若い者に譲り、集めた資産は全て貧しい者に分け与え、一人で暮らしていた。  しばらくのんびりと暮らしていたが、このところ体調が悪く、頭も冴えない。終わりの時が近いのだろう、というのが彼の見立てだった。  彼は久しぶりに魔人を呼び出した。 「お呼びですか?ご主人様」 「ああ、願い事があるんだ」  魔人は驚いたが、すぐに得心したように言う。 「なるほど、不老不死ですね」 「違うよ。永遠に生きていたいと思うほど、甘い生活をしてきたわけじゃないことは知っているだろ」  魔人は黙り込んだ。
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