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序
二人が産声を上げたのは太陽の下、薄ら月も見える静かな夕方だった。大人達が慌てた様子でバタバタと行き交い、しばらくして小さなベッドに移された。
「見てよ!この可愛い寝顔!」
「まさか…こんな事があるなんてね…」
「だーから。二人だって言ったでしょ?」
ベッドを見つめる男女の顔は骨が溶けたのではないかと思うほど、ふにゃりとしている。
「よし!名前決めた!純麗に綾芽!見て?空が綺麗な紫色よ」
そう言う女の視線を追って窓の外を見た男は頷いた。
「本当だ。きっと気に入るよ。この子が先だった…んだよね?って事は純麗がお姉ちゃんか。仲良くしてくれるといいんだけど」
女は首を縦に振りながら男の右手をそっと握った。
「大丈夫よ!私達なら!」
「そうだね。一緒に頑張ろう」
男は女の手を握り返し微笑んだ。
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