2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「あとは僕のほうから会社に連絡しておきますんで」
「分かりました」
……よく見たら佐藤カナメってアイドルみたいな顔してるな。カワイイ系。今思い出したんだけど、前にどハマりしてた女性向けパズルゲームの推しキャラに似てる。
いやそんなことはどうでもいい、とふと我に返る。私が気になったのは、彼の引退理由だ。
「次の方、お待たせしましたー」
順番が来てしまった。予め決めていたお目当ての大福を購入しながら考える。
この時、置き去りにしてしまった咲ちゃんの事はすっかり忘れていた。（ごめん、、、）
公式発表では、3日前から手の怪我で菓子作りを続けられなくなったと書いてあった。
それは大体1週間前の話。右手が左手か知らないが、怪我したばかりの手で重そうなお土産の袋を持てるレベルまで回復するかな？
まぁいいや。なにか裏事情があったのかもしれないし。もう会うことはないだろうし。
あ、せっかくだしサインもらっとこ。ファンではなかったけど。
会計が終わり振り返ろうとした時、肩をトントンッと叩かれた。
「ビターチョコ、お好きでしたらどうぞ」
両手の荷物をおろし、渡されたのはかわいい包装がされてるお菓子箱だった。
「そんな、受け取れません」
「いや、迷惑かけたんで受け取ってください。買いすぎたんで」
「…お言葉に甘えて。」
───────
いい人だったなぁ。声掛けてよかった。
「もぉ、やっと見つけた！宙ちゃん！」
「ごっめん…！！美味しそうなのぼりを見かけてつい…」
「別にいいけど、集合時間遅れるよ？」
「はいっ！急ぎます！」
最初のコメントを投稿しよう！