#01 傾いたフルーツタルト

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「おう、早かったな」 「たかみんが…はぁ…料金2倍にするとか言うから…途中から走った…」 「運動不足じゃねーの?」 「久々にこんなに走ったわ…」 「新作練ってたら、宙が来るっつーから。試食してくれるか?」 「ぜひ!!!」 「ほんと、甘いものに目が無いよなぁ」 「甘いものは私を救うんだよ…わかった?」 「ハハッ、分かってるって…十分な」  十分な、と口に出した時のたかみんの表情は、愛しのわが子を見つめている時の父親の表情に似ていた。  時々子ども扱いするんだよなぁ。同い年なのに。 ─────── 「ふぅ、どれも美味しかった……」 「美味そうに食うのは良いんだけどさ、具体的な感想をくれよな」 「推しを目の前にすると語彙力が大幅に低下するオタクのように、美味しいものを食べてる時は言葉が出てこないの!」 「要するに俺は宙の表情から感想を読み解くしかないんだな。」 「まあね〜」 「はい、お土産」 「こ、これは……」  渡されたケーキ箱を少し開けると、つやっつやを身にまとったフルーツたちがてんこ盛りのタルトが2つも見えた。 「普段の倍以上のフルーツが入ってる…!」 「試食に付き合ってくれたお礼。クッキーも期限近いからやる。」 「ありがとうございます、たかみん様…!お代はいくらでしょう」 「もうレジ閉めたからいーわ。めんどっちい」 「……ありがと。」  たかみんは優しいけど、分かりづらい。幼なじみだから、私は容易に分かるけど。女の子にモテないタイプだな。 「また来いよ〜」 「じゃあまたね!」
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