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#01 傾いたフルーツタルト
今日は待ちに待った給料日!
しかも金曜日!!
そして、ご褒美ケーキの日!!!
宮永 宙 (みやなが そら) は、社会人2年目のOL。大の甘党である。
定時ぴったりに速やかに帰宅の準備を整え、急いで会社をで───
ようとしたが、上司からお呼びがかかってしまった。
「宮永さーん」
「…はい」
「企画書出してないよね」
あ…忘れてた。企画書出すの、今日までだった。提出期限が短くなったんだった。居残りしている人達は多分仲間だな。
「すみません」
企画書とは、新しい文房具のアイデアの企画書である。私の勤めている会社は、文房具の取り扱いをメインとする中堅企業だ。
……つーかそういうのは企画部が考えろよ!なんで全社員にアイデア求めんだよ。
頭の中で不満爆発大会を催している。どんな物にするかは決めたけど、まだ機能やデザインが曖昧なままだ…。
────2時間後。
やっとできた…!今日が金曜日じゃなかったら泣いてたぞ。子どもにドン引かれるぐらいに泣いてたぞ。
頑張った、偉い。近くに誰もいないのを確認し、そう呟きながら提出する。
まだケーキ屋さん空いてるっけ…もう20時過ぎてんじゃん。どこも空いてないわ…
「あ、たかみん!たかみんに連絡しよう」
たかみんこと鷹見 圭(たかみ けい)はパティシエをしている私の幼なじみ。
彼はフランスかどっかの国で修行して日本に戻ったあと、地元に帰って自分のお店を開いていた。
会社からちょっと遠いけど頑張って歩くか…。あいつ閉店作業してるだろうし、LINE送っても気づかないよね。電話しよ。
「もしもーし」
「おう、宙かぁ!久しぶり。電話とか珍し…会社クビにでもなったのか?」
「んな訳ないじゃん。せっかくあんたの店のフードロス削減に貢献してあげようとしたのに」
「はいはい。で、何ケーキが良いの?」
「フルーツいっぱい乗ったやつ!!」
「15分以内に来いよ。じゃないと料金2倍にしてやっから」
「はあ?!半額にしてよ!」
「気をつけてこいよー」
電話を切ったあと、私は走り出した。
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