第二章 ダリア姫の悲劇

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 どれくらい眠っていたのだろうか。  ダリアがふと目を覚ますと、見なれたアゼレアの部屋の、そのベッドの上で自分が寝ていたことに気付いた。 「邪魔しちゃったかな。アゼレア、おばさんのとこにでも行ったのかな……」  窓の外はすでに真っ暗で、部屋を照らすランプだけがベッドのそばの文机の上で、メラメラと燃えていた。 「アゼレア?」  ベッドからゆっくりと起き上がると、ダリアのひざからアゼレアの羽織がはらりと落ちた。緑の生地に薄桃色や濃い桃色のツツジがいくつか刺繍された、アゼレアのお気に入りの羽織。彼女の誕生日におばさんがプレゼントしたもので、いつも手放すことがなかったものだ。それをダリアの体にかけていなくなっていた――。  なにか不吉な予感がした。ダリアは急いで立ち上がると、ランプを手に部屋を出た。階段を駆け下りると、とびらの前でだき合っている二人の影を見つけた。ランプをかかげて見るとそれはアゼレアの両親だった。 「おじさんおばさん! アゼレアは?」  ダリアの姿を見つけたアゼレアの父親は、胸に妻をだきしめたまま悲しそうな目を向け、低い声でぽつりと答えた。 「ダリアさま。アゼレアはいきました。その羽織とこの手紙を、ダリアさまに、と残されて」  そう言って伸ばされた手には、折りたたまれた手紙があった。ダリアはランプを足元に置いて手紙を受け取ると、震える両手でゆっくりと開いて読み始めた。
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