4人が本棚に入れています
本棚に追加
どれくらい眠っていたのだろうか。
ダリアがふと目を覚ますと、見なれたアゼレアの部屋の、そのベッドの上で自分が寝ていたことに気付いた。
「邪魔しちゃったかな。アゼレア、おばさんのとこにでも行ったのかな……」
窓の外はすでに真っ暗で、部屋を照らすランプだけがベッドのそばの文机の上で、メラメラと燃えていた。
「アゼレア?」
ベッドからゆっくりと起き上がると、ダリアのひざからアゼレアの羽織がはらりと落ちた。緑の生地に薄桃色や濃い桃色のツツジがいくつか刺繍された、アゼレアのお気に入りの羽織。彼女の誕生日におばさんがプレゼントしたもので、いつも手放すことがなかったものだ。それをダリアの体にかけていなくなっていた――。
なにか不吉な予感がした。ダリアは急いで立ち上がると、ランプを手に部屋を出た。階段を駆け下りると、とびらの前でだき合っている二人の影を見つけた。ランプをかかげて見るとそれはアゼレアの両親だった。
「おじさんおばさん! アゼレアは?」
ダリアの姿を見つけたアゼレアの父親は、胸に妻をだきしめたまま悲しそうな目を向け、低い声でぽつりと答えた。
「ダリアさま。アゼレアはいきました。その羽織とこの手紙を、ダリアさまに、と残されて」
そう言って伸ばされた手には、折りたたまれた手紙があった。ダリアはランプを足元に置いて手紙を受け取ると、震える両手でゆっくりと開いて読み始めた。
最初のコメントを投稿しよう!