第二章 ダリア姫の悲劇

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 朝陽が降り注ぐ道を、ダリアは手紙と、アゼレアの愛用していた羽織を胸にかかえ、足を引きずるような重たい足取りで歩いていた。  アゼレアが家のベッドから起き上がるのすら苦労するようになったころ、すでに病気は行きつくところまで進んでいたそうだ。アゼレアの手紙を読み終わって呆然としたダリアに、アゼレアの両親が感謝の言葉と共に、そう教えてくれたのだ。  本来なら医者も、手の施しようがないと見捨てるほど衰弱していたアゼレア。彼女を助けていたのは、ほかの誰でもなくダリアの父親、ポラリス王国の国王だった。  ダリアが家族よりも大事にしている人を最後まで手を尽くして助けるように、国の中で一番優秀な医者と薬剤師を、定期的にアゼレアのもとへ派遣していたのだという。  医者と薬以外にも、栄養のある果物や貴重な食物を可能な限り送っていたという。  ダリアはなにも知らなかった。そのことでひどく自分を責めた。だからダリアは、アゼレアの両親に自分を責めていいと言い放った。しかし、ここまでしてくれたダリアに感謝しかないと言って、二人は苦しい心中を押してダリアに笑顔を見せた。その上今夜はもう遅いからと、ダリアに泊まっていくようすすめた。ダリアはその申し出を素直に受け、アゼレアの部屋にもどると、ずっとベッドに泣きふした。  夜が更けてくると、ダリアはアゼレアの両親には何も告げず、部屋をあとにした。  歩き始めた道は、いつもと違う、城とは逆の道だった。つまり、森へと通じる馬車の道。ダリアは森の湖を目指してゆっくりと歩いていた。親友の願いを踏みにじることになっても、自分が今行くべき場所は城ではなく湖だと思ったのだ。
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