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第五章 ダリア姫の推理
森の魔女バーチは意地悪な言葉遣いに反して、親切にもダリアにいろいろとシルエラのことや赤鬼のこと、そして彼らの先祖の話を教えてくれた。
バーチはどうして彼らと出会ったのか。バーチが彼らやその子孫と関わっていくうちに、彼らこそがドラゴンとともに消えた、伝説であり英雄と言われる王さまと王子、そしてその子孫たちなのではないか、と推察していることも教えてくれた。
ただ教えると言っても、それはひとり言のようにのべつまくなしに語られたもので、ダリアも聞きもらさないことに必死だった。しかし聞き出したことをまとめればそういうことだった。
赤鬼もシルエラも、もとをたどればダリアと同じ王室の人間だった――。
それからもダリアは何日かバーチの家に通い、シルエラや赤鬼、そしてその先祖に至るまでの話をさらにくわしく知ることで、彼らへのいけにえも、ワケありであったことを知った。むしろ赤鬼やシルエラ、その先祖たちがポラリス王国の人間から敵対視されていたことを考えると、ダリアは同情せずにはいられなかった。
もちろん、ダリアはアゼレアを取りもどすことをあきらめたわけではなかった。しかし、アゼレアを連れもどすことで、良好なアゼレアの体調が逆もどりしかねないことや、赤鬼とシルエラの先祖からかけられている呪いには、なんの解決にもならないことから、ダリアは目をそらすことができなかった。
この世にすべての人間が幸せになる方法なんて存在しないように、ダリアもアゼレアも、赤鬼もそしてシルエラもバーチも、みんなで幸せになれる方法なんてないのかもしれない。いや、ないだろう。難しいことなのだろう。それでも、だれかが不幸になることでほかの人が幸せになる方法も、それは最善の策とは言えない。
だからダリアはふたたび城の図書室にこもって考え続けた。今のダリアにできることは調べることと考えることだけだった。アゼレアを救出し、なおかつこれからの未来に呪いが及ばない方法を。
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