第一章 ダリア姫の不安

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第一章 ダリア姫の不安

 ポラリス王国の城は国の西側に建っている。大きな宮殿といくつかの塔、そして使用人たちのための宿舎が建っている。宮殿の北西には三つの塔が連なっているが、その三つの塔は宮殿から離れるほどだんだん低くなるようにたっていた。その一番低く外側に建つ塔がこの国の姫、ダリアの部屋だった。  ダリア姫――本名ダリア・ポラリスは、この国の国王の次女で、今年の夏に十五歳になる。この国では十五歳で成人となるため、誕生日には盛大な成人式が行われる予定だ。  無邪気で明るく、少し向こう見ずなところがあるこの姫は、豊かな赤毛をピンクの水玉模様のリボンでまとめ、ワンピースのように薄くて軽いドレスを着て、いつもどこかを走り回っている、とても元気な女の子だった。  彼女の部屋の塔は地上からおよそ十メートルの高さにあるのだが、ダリアは部屋の入り口とは別に、この塔の窓からも頻繁に出入りをしていた。  一度だけ窓から軽やかに地上に着地したところを使用人の一人に見られ、城中に――それはもちろん、父親である国王や、いつもからかっていた弟の王子にも――知らされてしまい、赤っ恥をかいたことがあったのだが、さんざん怒られて「もう、ぜったいに、やめなさい」と耳にタコができるほど忠告されたというのに、ダリアは未だ窓から外出するクセが直っていなかった。  今日も朝食後に「読書をするから」と言って自分の部屋へもどってくると、小さな青色のポシェットを肩にかけ、窓の外に飛んで行った。白いドレスのすそがはためき、ゆるくカールがかった赤毛が風に流れる。その姿は大きなツルが飛び立つような美しい姿であることをだれも知らない。  
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