一 親友の死

1/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

一 親友の死

「──ひくっ……なんで、なんで成美がこんな目に……」  たくさんの菊の花に囲まれ、黒い額縁の中でくったくのない笑顔を浮かべている親友を前に、わたし、飯妻朋花(いいづまともか)は溢れ出す涙を止めることができなかった。   わたしの親友・今路成美(いまじなるみ)は、理不尽にも突然、その命を無慈悲な方法で奪われた…… 今年で高校二年生の、人生はまたまだこれからだという若さで……卑劣な猟奇殺人犯の手によって……。  今はすでに骨となっているが、ようやく警察から帰ってきた彼女の遺体は、遺影のよく知る成美とは似ても似つかないくらいの、見るも無惨な姿に変えられていたらしい。  全裸の状態で顔も身体も全身を切り刻まれ、恐怖と苦痛に歪んだ表現で硬直していたと、漏れ聞こえてきたマスコミの情報では言っている。  殺されたのはおそらく半月ほど前……いつものように学校で会い、帰りに別れたその直後のことだと警察は見ているようだ。  発見されたのは人目につきにくい河川敷。第一発見者は犬の散歩をしていた人で、バラバラにされ、打ち捨てられていた右腕を偶然、犬が見つけたのだそうである……。  この一年あまり、わたし達の住む町の周辺では同じような猟奇殺人事件が連続して起きていた。  犯行は約二ヶ月ごとの間隔で行われ、犠牲になったものは成美ですでに六人目となる……。  被害者は全員、成美と同じ若い女性。殺害方法も同じく拷問を加えたかのように、全身を刃物で切り刻むという極めて凄惨なものだ。  また、運びやすくするためなのか遺体は皆バラバラにされて無造作に遺棄されるという同様の処理方法であることから、警察は同一犯による犯行と考え捜査しているのであるが、今もって犯人の手がかりすら掴めていない状況である。  それからもう一つ、これが同一犯による連続殺人だと考えられる理由には、被害者達に共通する特徴がある……。  各々面識はまったくないし、一見して関係性は見られないのだが、全員どうやら〝パパ活〟をしていたようなのだ。  そのために、成美もじつはパパ活をしていたに違いないなどという心ないウワサが立ち、さらに故人と遺族、そして、わたし達親しい友人達の心を容赦なく世間は踏み躙った。  そんなこと、ぜったいあるわけないのに……。  成美は明るく気立もよく、人に恨まれるようなことはぜんぜんないし、そんな危ない不良行為などとは無縁な優等生だった。  それなのに、なぜこんなことになってしまったのだろう……通り魔のように、偶発的に犯人の標的にされてしまったのだろうか?
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!