一 親友の死

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「──やあ……元気出せとは僕も言えないけどさ……それでも、成美の分までしっかり生きていかなくっちゃね……」  葬儀が終わった後も遺影の前に立ち、わたしがずっとめそめそしたままでいると、同じく同級生代表としていて参列していた市里有輝(いちさとゆうき)が、遠慮がちにそう声をかけてきた。  成美と有輝とわたしは、高校入学以来の仲良し三人組だった……出会いは同じクラスになって、席も近かったので話すようになったくらいのものだったが、なんとなく気があったのか、気づけばよくつるむようになっていた。 「……グス……うん。ありがと……」  わたしは涙をハンカチで拭うと、必死に嗚咽を堪えながら礼を述べる。  成美を失い、彼だってわたし同様に辛いはずなのに……その優しさが、わたしにはなんともうれしかった。 「さ、みんな帰るし、僕らも行こう」 「うん……」  そして、淋しげな笑みを浮かべる有輝に促され、成美の両親に挨拶をして帰郎としたその時。 「……!?」  両親のとなりに朦朧とした面持ちで佇む、制服姿の成美がわたしの眼に映った。 「成美……」 「? ……どうしたの?」  唖然と立ち尽くすわたしに、有輝が怪訝な顔で尋ねてくる。 「な、成美が……成美があそこに! ほら、見て……あれ?」  そんな彼の方を振り向き、興奮気味にそう告げると再び視線を戻すわたしだったが、するとそこにいたはずの成美は煙のようにかき消えている。
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