0人が本棚に入れています
本棚に追加
高校一年生の秋、私は母の口から思いも寄らない言葉を聞いた。
「マリちゃん、病院に運ばれた……って」
急ぎ、母の車で病院へと向かったが、私は気が気でなかった。車の中で母が何かを話していたのは覚えているが、何を話していたか、頭に内容は入ってきていなかった。
病院に運ばれたといってもそれほど大したことはないに違いない。そう思い込んで、大丈夫だと自分に言い聞かせていたが、病床で眠るマリちゃんの様子を見て悪い予感が的中したと感じた。
病室にいたマリちゃんのお母さんが詳しい事情を教えてくれた。
「優里ちゃんは知ってると思うけど……真理子、てんかんを持ってるでしょ……。それで、発作のせいで階段から落ちちゃって……。頭の打ちどころが悪かったみたいで……お医者さんが言うには脳に障害が残るって……」
マリちゃんのお母さんは話しながら、涙をこぼしていた。言っていることは理解できたが、私にとってはまだ現実味のない出来事だった。
マリちゃんのお母さんは酷く取り乱している様子だったため、私は気遣って病室を出た。
そして、意味もなく病院の周りをぐるぐると歩いていた。
最初のコメントを投稿しよう!