昨日の等容

6/13
前へ
/13ページ
次へ
「うるさい! 黙れ!」  学校の休憩時間、賑わっていた教室が怒声によって水を打ったように静まり返った。  声のした方へ振り向くと叫んでいたのはマリちゃんだった。  次の瞬間、マリちゃんはクラスメイトの顔面を叩いていた。  状況は分からなかったが、これ以上はよくないと思い、マリちゃんを制止しにいった。  クラスメイトは号泣していて、マリちゃんはひどく興奮していた。私はその様子に動揺と驚きを隠せなかった。  今までマリちゃんと一緒に過ごしてきたが、マリちゃんが怒ったのを見たことがなかったからだ。その場は何とか収めて、後からマリちゃんに事情を聞いた。 「マリちゃん、どうしたの? あんなに怒って?」 「うざいって言われた」  本当にそれだけ?   私はそう思ったが、口には出さないでマリちゃんを必死になだめながら詳しい話を聞こうとした。しかし、それ以上のことは分からなかった。    マリちゃんに叩かれたクラスメイトにも何があったのか聞いてみたが、本当にそれだけのことだった。    クラスメイトは会話の流れで、ふざけ半分でうざいといったところ、マリちゃんが激昂したらしい。    後日、マリちゃんはそのクラスメイトに謝罪したらしいが、その日以降、そのクラスメイトがマリちゃんと話す場面を見たことがない。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加