昨日の等容

8/13
前へ
/13ページ
次へ
 そして、私と真理子は高校二年生になり、同じクラスで生活している。    私が次の授業の準備をしていると、真理子が近くにやってきた。 「何?」  私はわざとらしく不機嫌そうな態度で真理子に問いかける。 「ねえねえ、聞いて聞いて! うちで飼ってる猫がさ、めちゃくちゃ可愛くてさ! 今朝なんかも膝の上に座ってきて、もう、可愛すぎるんだよね! 歩いてても可愛いし、何してても可愛いんだよねー。それに加えてさーーー」  また始まった。こうなると私が真理子の話に入り込む余地はなくなる。私が別の話題を振っても、真理子が一方的に話すことが多い。  私は真理子の話に適当に相槌を打ちながら、勉強をするふりをしていた。 「ねえ……聞いてる?」 「うん。聞いてるよー」  私は机の上に開かれた参考書に視線を落としたまま、返答していた。  すると、視界の横から手が伸びてきて、参考書を閉じられた。 「聞いてないよ! なんでそんな素っ気ない態度を取るの! 私に言いたいことがあるなら言ってよ!」  急に出された大きな声に驚いて真理子の顔を見ると、険しい表情をしていた。どうして私が怒られなければならないのだろうか。訳が分からない。  返す言葉が出てこなくて、私は咄嗟に「ごめん……」と言った。 「ごめんじゃわからないよ! なんで……」  そこまで言って真理子は口を噤み、教室から出て行った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加