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「今日はあいにくナナが風邪をひいておるのだ。せっかく来てくれたのに、すまん」
「いいえ。お察しいたします。では私は後日、参りますので、どうぞ子育てに専念なさってくださいませ」
彼女は礼を尽くして帰って行った。すぐ次にサロットがやってきた。
「国王様、開発地の経費の件でお話が」
「よし、わかった。うわ、発射! 新しいオムツ!」
サロットは吹きだした。
「お察しいたします」
「すまん。サロット、今すぐーー」
「大丈夫です。できることはこちらで進めておきましょう。国王様、どうぞ頑張ってくださいませ」
アダムは政治と子育てに忙殺されたが、それでも幸せの絶頂だった。ナナの風邪が治った一週間後、彼は仕事と夕食を終えて、彼女と寝室のベッドに横になる。
「ナナ、手握っていいか」
「はい」
二人は一緒に微笑んだ。
「愛してる」
「愛してる」
三ヶ月後、アダムが仕事をしていると、声がかかった。振り返ると、サロットがやってきていた。険しい顔をしていた。
「悲しいお知らせです」
「何だ」
「落ち着いてお聞きください。ナナ様が散歩中、階段を踏み外して」
アダムは目をむいて乗り出した。
「怪我か?!」
「いいえ。即死でした」
しめやかに葬儀が行われた。アダムは会場で大泣きした。彼女を愛していた。これからもずっと愛する。
その後、彼はショックでこもりきりになってしまった。
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