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ともあれ既存のSNSのあり方に疑問を持った鍾矢が、きららのリハビリの為に誰も傷つかない理想のSNSを作ろうと開発したのがB⭐︎Sのパイロット版だった。
「僕自身はこんなだし、B⭐︎Sもこんな形で終わってしまいそうではあるけど……きららには心を許せる友人が必要なんじゃないかな」
鍾矢はきららの頭を撫でながらそう言った。
「友達かあ。今からでもできるかな……デビュー前からの友達とはとっくに切れちゃってるし」
「メイメイ、だったっけ。B⭐︎Sが閉鎖される前に連絡先を聞いておけばいいだろう。それとも特定してやろうか?通ってる学校と住んでるエリアくらいなら……」
「ううん、やっぱりいい」
きららは首を横に振り、身体を離した。
「メイメイは私が『キラルン』だった時、炎上騒ぎから助けようとしてくれた子……アンチに反論したって、面白がられて酷い事書かれるだけなのに……あんな純粋なファンの子いないよ。B⭐︎Sでも気が合ってずいぶん支えられた」
「だったら……少なくともネットの上だけなら繋がってていいんじゃないか?」
「でも、住んでるのが都内と関東だといつか『会おう』って流れになりそうじゃん?」
「かもな」
「私は『キラルン』だった過去を彼女に知らせる気はないの。隠し事したまま深い友達づき合いするのも気が重いし……」
「そうか……」
「彼女の中に、元気一杯に歌い踊ってキラキラ輝いてたキラルンの姿をそのまま残しておいてあげたいとも思うんだ。それが私からの感謝の気持ち。お互いいい思い出だけ持って、このままアカウントごとフェイドアウトでいい」
「きららがそれでいいならいいけど……」
鍾矢が就寝前の換気のために窓を開けると、暖かい室内に真冬の冷気が刺すように吹き込んだ。はるか先には星の疎なリアルの夜空がある。彼女の所からはどんな風に見えているだろうかーーきららはそんな事を考えていた。
了
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