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「メールで送っといた。連休の間、確認したいかな、と思って。私もチェックしたけど星野くんも隅々まで見ておいてね」
仕事の話の時は流石にニックネームでは呼ばない。自然と公私を分ける楓に星野から笑みがこぼれる。
急ぎでとは頼んでいなかったのに。だが早くデータを貰えるのは助かる。特にこの取引先に於いては。
「サンキュ。助かるよ、山下」
星野はタブレットを取り出しメールが届いているか確認する。
ざっと確認すると、依頼していたのと他に、頼んでいない資料も添付されていた。
パッと見て、星野はヒューッと、感嘆の声を上げた。
「使えるでしょ、それ?」
自分の作ったモノに自信を滲ませた声で楓が問いかける。
商談先の部長、立石が欲しがるポイントを押さえている。
立石が食い入るように資料を見る姿が脳裏に浮かんだ星野は、楓を見て口を開いた。
「ありがとうな、使わせてもらうよ」
楓に感謝しつつ、つくづく彼女が営業から異動になったのを惜しく思うのだった。
※
仕事の話はこれで終わり、と星野が告げたのは、彼がビールからサングリアに切り替えた時だった。
酒の弱い楓はトニックウォーターで喉を潤しつつ、料理を味わっていた。
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