11.お試し交際って?

5/5
908人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
「だからさ」 悪そうな顔をしている。満面の笑みなのに、どこか邪気がある。 「その時の償いをすると思ってさ。お試しで付き合ってよ。もちろん、キスとか体の関係ありで。ねっ」 眩しいまでの営業スマイル。笑顔の押しが強い。強すぎて、肯定の返事しかできない。 「うぅ……」 あっさり認めるのは悔しい。だけど残された返事は一つしか無い。 「……条件が、ある」 苦し紛れに楓は提案する。 お試し交際の期限は長くても3月まで。 嫌だと思ったらすぐに終わりにすること。 そして。 「終わる、ってなったら、全て忘れてくれる?告白から付き合い終了のこと全部。 ……ホッシーとは、同期としてずっといい関係を築いていたい」 「山下はそれでいいの?俺が付き合っていた間のことを全て忘れても」 「……?うん?いいよ」 「わかった。一つだけ条件追加させて。 ……お試し交際終了した後、俺は全て忘れる。だけど、山下は覚えていて。 俺がどれだけ好きだったのか」 何を言っているのかその時はわからなかった。だから楓はあっさりと了承した。 笑顔で礼を言う星野。 この選択が星野の計算だったことに楓が気づいたのは、ずっと後のことだった。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!