第一章・妖精の子供になりました。

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第一章・妖精の子供になりました。

 私は、物心つく頃から心臓が弱かった。何度も手術をしても治る見込みがないと判断されて、残すは移植手術のみ。  しかし虚しくもドナーの順番が回ってくる前に、私はこの世を去ってしまった。  儚い命だった。もっと長く生きたかった。  いろんな世界や物に触れて楽しみたかった。神様は意地悪だ。私を見捨てるなんて。  そう思うと成仏が出来ずに魂だけが、さまよう。  そして何日かさまよい、山の付近に飛んでいる時だった。眩しい光が浴びると吸い込まれていく。気づくと知らない世界が。  キラキラした不思議な感覚だ。すると、うっすらと人影が見えてきた。誰か居るの? 『おや? 迷子かい? 迷える魂よ』  私は、その人物に驚いた。なんて美しいのだろうと……。  絹のようにサラサラした白銀で太もも以上にある長い髪。キリッとした切れ長のグレーの目。肌白で、この世と思えないほど美しく端正な顔立ちだ。  それに羽根も生えていた。着物を着ているが年齢は20代ぐらい? (……誰? 神様かしら?)  そう思うぐらいの圧倒されるオーラで輝いて見えた。男性? こんな美しい男性は、見たことがない。  その男性は私を見てクスッと笑ってきた。 『……なるほど、可哀想に。儚く散った少女の魂が迷い込んだか……良かろう。見たところ、そなたは純粋で美しい心を持っておる。そなたにチャンスをやろう。私の元に来るが良い。新しい身体を授けよう』  えっ? 新しい身体? すると私の魂は輝きだした。 (えっ……何? 何が起きたの!?)  その輝きは、さらに大きくなり私を包み込んだ。意識が保てずに気を失ってしまう。  周りが真っ暗になると何処からか声が聞こえてきた。 『この子を私が育てるのですか!?』 『そなたは面倒みが良いと聞いておる。まさに適任だろう? 何、すぐに育ち、そなた達の年に追いつくだろう。立派に育てておくれ? 私の娘としてのう』 (あれ? この声は、さっきの人? それよりも育てるとか、どういうこと?)  私は不思議に思いながら、うっすらと目を開けた。
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