第三章・獣族の皇子様

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「妖精族……よくも俺の父ちゃんを。絶対に許さねぇ」  えっ? すると獣族の男の子は鋭い爪を尖らせて私に飛びかかろうとしてきた。  また!? 私は怖がって身体を硬直させる。  すると煌君は、すぐに私の前に立つとその男の子に足蹴りした。見事にお腹に命中する。変身が解けて小さなクマになった男の子は、コロコロと転がり倒れてしまった。  く、クマだ!?  私は唖然としながらそれを見ていた。煌君は平然としながらもギロッとその小さなクマの男の子を睨み付けた。 「お前……妖精族に殺されたクマの子供か?」  その小さなクマは起き上がってきた。目がクリクリに大きくてサイズ的にもクマのぬいぐるみみたいだ。何とも可愛らしい姿だわ。クマは涙をポロポロと流していた。 「俺の父ちゃんを返せ。父ちゃんは、人を噛み殺して追放者にされたけど……あれは、俺を守るためだったんだ。俺が捕まりそうになったからで。それでも家族で山の奥でひっそりと暮らそうとしていたのに。なのにお前ら妖精が父ちゃんを殺したんだ。だから俺は、お前らを許さねぇ」  泣きながらも必死に訴えてきた。えっ? ちょっと待って。  確かに追放されたクマが妖精界の結界を破ろうとしてキョウ様に殺されたと聞いた事があるが。でも、この子の話だと微妙に違う。  まるで、誰かにそそのかされたかのように妖精族のせいに話を変えられていた。  そんなはずがないわ。シンの話だとクマは、あの時に獣族に操られて正気ではなかったはずよ? 「ちょっと待って。話が違うわ。アレは……獣族が、わざとあなたのお父さんを操って妖精界の結界を破ろうとしてしたから。だからキョウ様が仕方がなく」 「嘘をつくな。妖精族は獣族が憎くて仕方がないんだ。だから父ちゃんを殺したんだ」 「違う……」  話は平行線のままだ。この小さなクマの男の子は妖精族が父親を殺したと思い込んでいる。その誤解を解かないとやめる気はないらしい。  このまま揉めて他の妖精達に気づかれたら、この子もただでは済まなくなる。  何とかして早く誤解を解いて立ち去ってもらわねば……。 「おい、どっちが正しいんだ?」 「それは……もちろん」  そう言いかかった時だった。いつの間にかクマの男の子の後ろにキョウ様の側近であるセイ様が立っていた。
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