第三章・獣族の皇子様

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 まったく気配も無かったので驚いた。セイ様は包みを持ったまま黙ってクマを見下ろしていた。 「……ここで何をしている?」 「あっ、いつの間に!? お、俺は」  振り返り慌てるクマの男の子を無視してセイ様は、その子の顔を片手で掴んできた。 (えっ? ちょっと……)  あの小柄で細い腕に、よくあんな力が!? と思うほど凄い腕の力で持ち上げてしまった。 「や、やめろ……痛い、痛い……離して」  クマの男の子は、痛そうにバタバタと手足を動かして暴れていた。しかし、それでもビクともしない。普段、物静かなセイ様とは思えない行動だった。 「やめろ。痛がっているだろーが!?」  煌君は同じ獣族の男の子が苦痛になっているのを見て居ても立っても居られなくなったのか叫んだ。しかしセイ様は無表情のままだし、力も抜かない。  それどころか、痛そうに暴れていたクマの男の子は段々と身動きが小さくなっていく。  しばらくするとセイ様は手を離す。するとドサッと倒れてしまった。  そ、そんな……!? 「き、貴様……よくも俺の仲間に!?」  怒り狂った煌君はセイ様に飛びかかろうとしてくる。私は必死に煌君を抱きついて止めた。だ、ダメ……騒ぎを大きくてしないで!? 「だ、ダメだよ……煌君。セイ様は、キョウ様の側近なんだから。下手に下がったら、煌君の身が危ない」 「うるせー離せ。アイツは俺の仲間を殺したんだ!? アイツは、まだ幼い子供だぞ? そんな奴を簡単に殺す奴は俺は許さねぇ」  まるで、さっきのクマの男の子と同じだ。完全に血が上っていて手がつけられない状態に。  しかし、そんな状況でも顔色一つ変えないセイ様だった。 「……殺してはいない。記憶を消しただけだ」 「……記憶を消した……だと?」  するとセイ様は包みを持ち替える。そしてチラッと煌君を見た。
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