第三章・獣族の皇子様

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 身体を大きくさせると私に近付いてきた。私は思わずルイに飛びついた。 「どうしたのですか?」 「ふえーん」 「カレン?」  ようやく理解すると、涙が止まらなかった。本当の意味で煌君に嫌われたと思った。  あの冷たい表情にショックを受ける。ルイは意味が分からず困惑をしていたが私を抱っこしてくれた。  その後、妖精界の戻るがキョウ様に呼ばれる。きっとセイ様がキョウ様に伝えたんだ。私は、ルイとシンに連れられ本家の方に出向いた。  重苦しい雰囲気に胸が締め付けられそうだった。 「話はセイからすべて聞いた。さてさて、どうしたものかのう……」 「あ、あの……ご迷惑をかけてすみませんでした。ですが、あのクマの男の子は何か勘違いをしていて。まだ小さいから状況が分かってないと思います。それに煌君も私をずっと守っててくれました。だから穏便に済ませてあげて下さい」  失礼だと思ったが必死に訴えた。クマの男の子は勘違いしているだけで、ちゃんと話せば誤解を解けたかもしれない。それに、煌君を責めないでほしかった。  嫌われてしまったとしても彼は関係ない。私を守ってくれたのは事実だ。  しかしキルア様は、それに対して怪訝そうな表情をしてきた。 「理由がどうあれ、妖精族に喧嘩を売ってきたのには変わらない。これは、獣族の宣戦布告ですよ? キョウ様、彼らを始末するべきです!」 (そ、そんな……!?)  私は血の気が引く感覚がした。始末だなんて……煌君が危なくなる!? 「そ、そんな……お願いします。獣族も悪い人達ばかりではないのに、始末するなんて可哀想過ぎます!」 「カレン。その辺で」  食い下がらない私に、ルイは慌てて止めようとする。でも諦めたら煌君が……。  するとキョウ様は、扇子を広げると口元を隠すと何か考え込んでいた。 「ふむ……困ったものよのう。クマの子に関しては、記憶を消えたことだし。これ以上追求をしないとしよう。そうじゃのう。カレンの意思に任せるとしよう」 「キョウ様!? そんな悠長なことを」 「カレン。私は、けして獣族と争いたい訳ではない。獣族も妖精族もあやかしであり、我々と同じじゃ。しかし長年お互いを認め合わず言い争ってきた。だが時代は変わりつつある。若い者が新しい未来を切り開いていかなければならない。そなた達が、それを成し遂げるのじゃ」
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