リリスブックス

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「外したか」 駒割部長がスマホのライト機能であたりを照らすと数人の警察館が暗視ゴーグルをつけて待ち伏せていた。  碧は丁寧に本を閉じると駒割部長に本を渡し一歩前にでる。 「神宮前碧。稀有な武術を使うと聞いている、悪いが君と肉弾戦をやるつもりはない。君のかばっているモノは国家いや世界を混沌に陥れるレベルのモノなんだ。よってすでに君たちの生死を問わない命令が全職員に伝えられている。いますぐ投降しなさい。今なら君はなぐりかかった教師に自己防衛しただけだ。何の罪にも問われない」  警察官の胸にはみな十字架や獨古を首掛けてある。 碧は龍田教師に立ちはだかった時のように構えを取った。 「部長、全力で反対側に逃げてください」 「いやいやいや、逃げろって言われても、あたし関係ないのに!」 また大きな銃声が響く。 碧の左肩がいきなり鈍い音を立てて血を吹いた。 現実離れした驚愕と恐怖で駒割部長は動けない。 エキドナは冷たい目で警察官をみて右手を構えた。 だがピリッとした空気を感じるとイビツになるほど強く熊のぬいぐるみに力が入り髪が逆立ち大きな瞳が真っ赤に光るリリスに気づいた。 エキドナは初めて見るリリスの表情にたじろぐ。 リリスは突然、指笛を吹いた。  「なんだ?」 警察官たちが身構える。駒割部長の足元を何かがかすめた。先ほどのドブネズミ、いや一匹ではなかった。ドブネズミはどんどん増え四方八方から現れ警察官たちに襲い掛かる。 あっというまに警察官たちは体中がネズミだらけになった。 まるでネズミの塊。 「た、たすけ……」 リリスのぬいぐるみの手にぐっと更に力が入る。 そこで碧がリリス手に触れる。 左肩から流血しながら、リリスの赤い瞳を見つめ首を横に振った。 リリスは碧の眼を見つめかえすと一瞬躊躇するも下唇を噛みうつむく。 リリスの瞳の赤い光が消え美しい青い瞳に戻っていく。  すると警察官たちに群がっていたドブネズミが襲撃の牙を緩めさーっと散らばっていく。 「うわー!」 警察官たちが一目散に逃げていく。  碧はその場で左肩をかばってうずくまる。 「神宮目前君!大丈夫かね?!」 リリスが姉、エキドナのスカートの裾をひっぱり懇願する。 「あ、ああ」 しばし茫然としていたエキドナは右手を碧に添えると、碧の足元に銃弾が突然現れコロコロと転がった。目の前で起こる奇跡に駒割部長は見入った。さらにエキドナの右手は白く光り碧の肩を照らした。 「これ、ヒールってヤツ? おお初めて見た!」感動する駒割部長。 「とりあえず銃弾を抜き、止血はした。だが体力は戻っていない。私は回復( これ)系の力は得意ではない」 「充分だ」 碧は心配そうに見るリリスの可愛らしさに思わず変態的ににんまりした。 「いやいやいや、決まらん男だ」駒割部長はため息をつく。
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