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レンタル期間が終了し、桜井は迎えに行った玄関先で、ククク、と笑っていた。
「元気にやれよ?」
「あぁ、お互いにな」
ジンがあの日と同じように握手を求めると、男はそれに応え、そのまま抱擁を交わし肩を叩いた。
二人のやり取りは、格闘家が互いの健闘を称え合うような光景だった。
「ジン、悪かったね」
「大丈夫っすよ。慣れてますから」
プランはシンプルだった。
それは男に自信をつけてもらうというものだった。
初めて訪れた日、あのあとジンは、客に言ったのだった。
「全て、命令口調で言ってください」
頭を下げ、玄関先での振る舞いを詫び、そう懇願した。
当初は戸惑っていた客だったが、相手がロボットであることに加え、驚くほど従順な様子に、徐々にそれは習慣と化していった。
しかし同時に、ある感情も芽生えることを桜井は狙っていた。
優越感と、征服感だ。
初見のジンが強面だったからこそ、それは男の中で、より大きく育っていった。
詐欺師のテクニックでもある。
弱気な人を、強気に変えていく。
そのためには、征服感を植え付け、優越感に浸らせていく。
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