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「どんな感じだったの?」
「まぁ、ご満悦な感じっすかね」
その過程で避けて通れないのは、自身を卑下することであり、そこに伴うのは、屈辱感だ。
しかしジンは、それに慣れている。
壮絶な過去を知る者は、桜井以外にはいない。
「いつ、彼の洗脳を解いたの?」
「洗脳なんて、人聞き悪いっすね」
「ごめんごめん」
「まぁ、自然に解けていったっすよ。社長と同じようなこと言ってきたっす」
「なんて?」
「もっと強気になれ、堂々と人に接しろって。自信を持てって、励まされました。笑っちゃいますよね。ロボット相手に」
「ククク……それは笑っちゃうね」
二人はそのまま込み上がる笑いを堪えきれずに、大きな声で笑い合った。
本当の強さは、威圧感でもなく、怯えないことでもなく、ましてや他者を傷つける力でもない。
誰かのために、手を差し伸べることができる優しさだ。
ジンのように。
または、今回の客のように。
「ジンが本当にロボットだったら、同じこと言ってきたかな?」
「いや、そりゃないっすよ」
「まさか、バレた?」
「いやいや、ボロは出してないっすよ。ただ、バレても大丈夫っすね」
「なんで?」
「本当の人間だったらよかったのにって、言われましたから」
「……そっか、そりゃ大丈夫だ」
強く優しい瞳で歩く客の姿を想像して、桜井はクククと笑った。
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