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激化するロボット製造業は、時に論争を巻き起こしていた。
たとえば、犯罪だ。
ある程度の意志を持ったAIが何か罪を犯したとして、その責任はどこにあるか。
各企業が口ごもる中、桜井だけは平然と答えていた。
「当然、ロボットです。ひいては、そのレンタルをする弊社にあります」
桜井は日頃から口にしていることがある。
一番信用できるのは、仲間だ。
仮に過ちを犯したとしても、そのために償うのであれば、本望だ。
桜井カンパニーには秘密がある。
それは、結束力だ。
詐欺集団であるにもかかわらず、裏切り者が出ない理由はそこにある。
「社長、お客様ですが、いかがなさいますか」
客の情報に目を通した桜井は、クククと笑った。
「いいんじゃない? 通して」
「……わかりました」
競争は激化している。
次第にそれは、他社の信頼を奪うことにも発展しつつあった。
欲深い人間がAIを扱うと、ろくなことがない。
そのくせ、責任や償いとなると、口ごもる。
こういうやつが、世界をダメにする。
桜井の目に、いつかの少年のような憎しみの炎が宿った。
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