桜井カンパニーの秘密

12/14
前へ
/14ページ
次へ
 激化するロボット製造業は、時に論争を巻き起こしていた。  たとえば、犯罪だ。  ある程度の意志を持ったAIが何か罪を犯したとして、その責任はどこにあるか。  各企業が口ごもる中、桜井だけは平然と答えていた。 「当然、ロボットです。ひいては、そのレンタルをする弊社にあります」  桜井は日頃から口にしていることがある。  一番信用できるのは、仲間だ。  仮に過ちを犯したとしても、そのために償うのであれば、本望だ。  桜井カンパニーには秘密がある。  それは、結束力だ。  詐欺集団であるにもかかわらず、裏切り者が出ない理由はそこにある。 「社長、お客様ですが、いかがなさいますか」  客の情報に目を通した桜井は、クククと笑った。 「いいんじゃない? 通して」 「……わかりました」  競争は激化している。  次第にそれは、他社の信頼を奪うことにも発展しつつあった。  欲深い人間がAIを扱うと、ろくなことがない。  そのくせ、責任や償いとなると、口ごもる。  こういうやつが、世界をダメにする。  桜井の目に、いつかの少年のような憎しみの炎が宿った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加